小惑星ベンヌからの生命の「材料」の発見
NASAの小惑星探査機「OSIRIS-REX」が採取した小惑星ベンヌのサンプルから、生命の基本的な構成要素が発見されたことについて詳述します。この発見は、生命の起源に関する重要な手がかりを提供し、太陽系の他の惑星にも同様の化合物が存在する可能性を示唆しています。
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米航空宇宙局(NASA)の宇宙船が採取し地球に持ち帰った小惑星「ベンヌ」の粒状のちりから、生命の化学的構成要素が見つかったことが、最新の分析で明らかになりました。ベンヌの試料からは、豊富な鉱物と数千の有機化合物が発見され、これにはたんぱく質を構成するアミノ酸や、DNAの基本成分である塩基も含まれていました。
今回の発見は、ベンヌにかつて生命が存在したことを意味するわけではありませんが、小惑星が数十億年前に地球に衝突した際に、こうした重要な成分を地球にもたらしたという理論を支持するものです。科学者らは、これらの化合物が太陽系の他の惑星にももたらされた可能性があると考えています。
ロンドン自然史博物館の宇宙鉱物学者、サラ・ラッセル教授は、「この発見から得られた知見は驚くべきものだ」と述べています。「これは私たち自身の起源について教えてくれるものであり、生命がどこで始まったのかという非常に大きな疑問に答えることができる」とも語っています。
この研究結果は、学術誌「ネイチャー」に掲載された2件の論文で発表されました。直径500メートルほどのベンヌの一部を採取することは、NASAがこれまでに試みた中で最も大胆なミッションの一つでした。小惑星探査機「OSIRIS-REX」は2020年、ベンヌの試料収集のためにロボットアームを展開し、それをカプセルに詰め、2023年に地球に帰還させました。
約120グラムの黒いちりが収集され、世界中の科学者に共有されました。この量は多くないように思えるが、実際には宝の山であることが証明されています。「一粒一粒がベンヌについて新しいことを教えてくれる」と、ラッセル教授は述べています。
新しい研究によると、ベンヌには窒素や炭素を豊富に含む化合物が詰まっていることがわかりました。これには、地球上の生命がたんぱく質を構築するために使用する20種類のアミノ酸のうち14種類と、DNAを構成する四つの環状分子(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が含まれています。
この研究では、鉱物や塩類の配列も発見されており、かつてこの小惑星に水が存在していたことを示唆しています。生化学反応に重要なアンモニアも、試料から発見されました。これらの化合物の一部は今回、地球外の岩石から初めて検出されたものです。
「その豊かさは信じられないほどだ。これまで隕石で見たことのない鉱物が詰まっており、その組み合わせも初めて見たものだ。非常に興味をかき立てられる研究だった」と、ラッセル教授は述べています。
近年の研究により、小惑星が地球に水と有機物をもたらしたという証拠が増え続けています。「初期の太陽系は非常に混沌としており、ベンヌのような小惑星が数百万と飛び交っていた」と、ロンドン自然史博物館のアシュリー・キング博士は説明しています。この考え方は、こうした小惑星が若い地球に衝突し、海を形成し、生命につながる成分を植え付けたというものです。
しかし、地球だけが宇宙岩石に衝突されていたわけではありません。小惑星は他の惑星にも衝突していたはずです。キング博士は、「地球はこれまでに生命が発見された唯一の場所であり、それが地球の唯一無二の特徴だ。しかし、小惑星が太陽系全体に炭素や水といった成分を運んでいたことは明らかになっている」と述べています。
「今私たちが理解しようとしている大きな課題の一つは、適切な条件がそろった場合、なぜ地球に生命が存在するのか、そして太陽系の他の場所でも生命を見つけることができるのかということです。」これは科学者らが引き続き解明しようとしている重要な問いです。
ベンヌから持ち帰ったちりや、まだ探査されていない宇宙の近隣部分について、科学者らは今後数十年にわたり研究を続ける予定です。