月版GPS「ムーンライト計画」欧州が進める月圏通信インフラ、月面着陸や探査車走行の性能向上へ
欧州宇宙機関(ESA)が進める「ムーンライト計画」について詳しく解説します。この計画は、月面における通信インフラを構築し、月面探査や着陸の性能向上を目指すものであり、国際的な宇宙探査の発展に寄与することが期待されています。
月圏での通信インフラを構築する「Moonlight計画」
2025年2月2日、準天頂衛星「みちびき」がH3ロケットにより打ち上げられました。日本の測位システムを構築する「みちびき」ですが、実は月でもこのようなネットワークを作る「Moonlight計画」が進められていることをご存知でしょうか。
現在、アメリカのNASAがヨーロッパのESA、日本のJAXAなどと協力し、月面に再び人類を送り込む「アルテミス計画」を推し進める傍らで、中国とロシアは2021年3月に「月面上に研究拠点を建設する」という計画に合意しました。冷戦期の宇宙開発競争を彷彿とさせるような競争が幕を開けています。
そんな中、各国の宇宙機関・民間宇宙企業が各々が別個に月圏での通信システムを構築している状況です。そしてESAが計画しているのが「Moonlight」というプロジェクトです。Moonlight計画は、月軌道上に複数の衛星を配置することで、月面における通信とナビゲーションをサポートすることを目的としています。
このインフラが整備されることで、各国が月に宇宙船を送り込む際に独自の通信システムを開発しなくてもよく、基本的なナビゲーションと通信のサービスを共有できるようになります。計画の成功は月を基盤とした宇宙探査の発展を大きく促すと予想されています。
さらに、恩恵を受けるのは月に向かう宇宙船のみならず、地球においても高度なリアルタイムデータの受け渡しが可能になります。正確なナビゲーション情報を提供することも目的の一つで、月面での着陸運用をはじめ、月面探査車の自動運転技術などにも利用することができます。これにより、宇宙船に搭載しなければならない機能・性能を減らすことができ、その分多くの貨物を月へ持っていけることが期待されています。
ESAによると、このMoonlight計画は、将来的に火星やその先へのミッションへの道を開いてくれるとのことです。2020年代後半までには最初の衛星の運用を目指しているとのことですが、今から月でのネットワーク構築が待ち遠しいですね。