ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したウォルフ・ライエ星のリング

ウェッブ宇宙望遠鏡が観測したウォルフ・ライエ星のリング

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中間赤外線観測装置「MIRI」で2023年9月に観測された「Wolf-Rayet 140(ウォルフ・ライエ140)」(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Science: Emma Lieb (University of Denver), Ryan Lau (NSF's NOIRLab), Jennifer Hoffman (University of Denver))本ドキュメントでは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測したウォルフ・ライエ星「WR 140」の塵のリングについて詳しく解説します。WR 140は、2つの大質量星から成る連星系であり、その周囲には多重の塵のリングが形成されています。ウェッブ宇宙望遠鏡による観測データを通じて、これらのリングが急速に拡大している様子が明らかになりました。

ウォルフ・ライエ星WR 140の概要

WR 140は、約5300光年先の「はくちょう座」に位置するウォルフ・ライエ星の一つです。ウォルフ・ライエ星は、O型星が進化したものであり、短命の恒星です。WR 140は、質量が太陽の約10倍のウォルフ・ライエ星と、質量が約30倍のO型星から成る連星系です。この2つの星は約8年周期で互いに公転しています。

塵のリングの形成

WR 140の周囲には、星から放出された恒星風が衝突し、圧縮されたガスから生成された塵が同心円状に広がっています。塵の生成は、2つの星が接近する期間に限られ、離れている間は生成が停止します。このため、画像には塵のリングが途切れた暗い領域が見られます。

ウェッブ宇宙望遠鏡による観測

ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置「MIRI」によって、WR 140の塵のリングは2022年7月と2023年9月に観測されました。これらのデータを比較すると、リングが約1年という短い期間で急速に拡大していることが確認されました。リングの拡大速度は、光速の1%に近い毎秒2600km(約毎時936万km)以上とされています。

塵の行方と恒星の運命

WR 140から放出された塵は、やがて散逸してしまいますが、ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えられるのは放出から約130年経過したものが限界です。WR 140は最終的に数十万年かけて数万のリングを生成すると予想されています。その後、ウォルフ・ライエ星は超新星爆発を起こすか、直接的にブラックホールを形成すると考えられています。

まとめ

塵の粒子は非常に小さいですが、地球を含む岩石惑星はこうした塵が集まることで形成されました。塵の起源やその行方を理解することは、私たち人類の存在を理解するための重要な鍵となります。ウェッブ宇宙望遠鏡による観測は、宇宙の神秘を解き明かす手助けとなるでしょう。

タグ:

コメントは締め切りました