5カ国目の月着陸を目指す日本の旅がついに始まった

5カ国目の月着陸を目指す日本の旅がついに始まった

日本の月探査機「SLIM」を搭載したH2Aロケット47号機は9月7日午前8時42分11秒,種子島宇宙センターから打ち上げられた。SLIMは打ち上げから47分33秒後に正常に分離され,予定していた軌道に投入された。月を目指す競争が世界で加速するなか,日本は5カ国目となる月着陸を目指す。

「ミッションの第一歩を踏み出せたことに安堵している。今後の月探査に必要な技術を実証し,一つ一つ着実に実行していきたい」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長は打ち上げ直後の記者会見でこう語った。太陽光パネルのほか,姿勢や軌道を制御する推進系も正常に動作することを確認し,月に向かう軌道に入った。日本初の月着陸を目指すSLIMの旅がついに始まった。


SLIM はX 線分光撮像衛星「XRISM」との相乗りで打ち上げられた。

降りたいところに降りる

SLIMは高精度の「ピンポイント着陸」を目標に掲げる。SLIMのプロジェクトマネージャを務めるJAXAの坂井真一郎教授は「『降りやすいところに降りる』ではなく『降りたいところに降りる』ための技術を確立する」と力を込める。これまでの月探査は目標地点からのズレが10kmあまりの範囲内に着陸させていた。SLIMはこれを大幅に上回る100m以内の範囲内に狙いを定める。

月への着陸は一発勝負だ。小惑星のイトカワやリュウグウのようにほぼ無重力の天体にタッチダウンする場合,位置を確認しながらゆっくりと接近できる。目標からズレていれば,再び上昇して次のチャンスへ望みをつなげる。地球の1/6ほどの重力がある月では,衝突を避けるためにエンジンを逆噴射して減速するため,燃料の制約からやり直しはできない。

SLIMは位置を自律的に微調整し,月へのピンポイント着陸を目指す。搭載したカメラで撮影した画像をもとにクレーターの位置を割り出し,それを月面の地形データと照らし合わせて自らの位置を推定する仕組みだ。月面に近づいたらレーダーを使って高度を検知し,月面の障害物を避けて安全に着陸できる位置を探す。高度15kmから降下を開始して20分ほどで月面に着陸するという。(続く)

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