宇宙で働け、半固体電池 山形大の研究室、JAXAと共同開発に挑戦

宇宙で働け、半固体電池 山形大の研究室、JAXAと共同開発に挑戦
2023/7/31 12:28

半固体電池のゲル電解質(左)と液体の電解質をマイナス30度の環境に置いた実験。電解液は凍ったが、ゲル電解質は凍らなかった
山形大の次世代電池研究室(米沢市)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、宇宙探査機向けの半固体電池の開発に挑む。マイナス30度でも凍らないゲル状の電解質を用いた半固体電池は、液状の電池と比べ、宇宙の過酷な温度環境に耐える可能性を秘めている。JAXAの知見を得ながら「月面ロボット」を動かす電池を目指す。

同室によると、電解液が含まれているリチウムイオン電池は、温度の高低差が激しい宇宙での使用が難しい。電解液が気化して電池が膨張したり、凍ったりしてしまう。月や火星の探査機で使われる電池は、マイナス40度の低温から、100度の高温までの範囲でも正常に作動することが求められる。

半固体電池の温度変化に対する耐性は、同室の実験で確認されている。マイナス30度でもゲル状の電解質は凍らず、60度の高温下でも正常に機能した。一方、電解液を含むリチウムイオン電池は凍結と膨張で機能を保つことができなくなった。

JAXAは、企業や大学の技術を応用して宇宙探査に新たな道を開く事業を展開している。今年3~5月に研究提案を募集し、山形大を含む12件が採択された。山形大は10カ月の事業期間で、200万円の研究費を受け、研究開発の見通しを確認する。

今後、同室の森下正典研究専任教授が宇宙用途に向けた電池の設計を担当する。まずは現状の半固体電池が宇宙用途に適応するかを確認し、課題が見つかれば改良する。大学スタートアップ(新興企業)のBIH(バッテリー・イノベーション・ハブ=米沢市、長谷川貴一社長)が試作を担当し、JAXAは宇宙環境を想定した評価試験を行う。

森下教授は「この事業の中で半固体電池の可能性を見いだし、宇宙技術をサポートできるような電池を提案していきたい」と話している。

◇半固体電池 山形大の森下正典研究専任教授らが開発した次世代電池。化学メーカー・大阪ソーダの「特殊ポリエーテル」を使うことで、リチウムイオン電池の電解液をゲル化している。液漏れや発火リスクを低減させ、長寿命化や急速充電も可能。既存設備を利用して製造でき、コストを抑えられる利点もある。(引用)

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